昭和24、5年頃。終戦後、東京で自動車の修理工場を始めた石津圭三は、地方から上京して成功した新興成金だが、明朗な性格の持ち主で、若いながら仕事一筋の生活を送っていた。ある日その圭三に縁談が持ち上がった。相手というのは学習院出の華族の令嬢である。最初は身分が違うと取り合わなかったが、仕方なく会うことにした。
見合いの日、圭三が仕事着で約束のお店で待っていたところ、そのお嬢さん泰子が現れた。憂愁と気品をたたえた澄んだ眼、謙虚な美しさを持った顔、教養と育ちが醸しだす静かな物腰。それらは圭三が想像していた高慢ちきな良家の令嬢という観念からかけ離れたものであり、圭三は一目で恋に落ちたのだった・・・。