前九年の役で八幡太郎義家に敗れた奥州の安倍一族が復讐を図る物語で、上演頻度が高いこの「環宮明御殿の場」は、親子の情愛と葛藤を描く劇的な場面。
帝の弟・環宮が行方不明となり、その咎から平直方に切腹の命が下される。そこへ父の難儀を知った娘の袖萩が駆け付ける。しかし駆落ちをして安倍貞任の妻となり零落した袖萩に、直方は対面を許さない。そこで袖萩は祭文を語り、父母へ許しを乞う。
やがて直方は切腹し、袖萩も自害。
ここへ桂中納言が現れ、直方や袖萩に哀れみの言葉をかけて立ち去ろうとするが、源義家はこれを安倍貞任と見破り、義家と貞任は戦場での再会を約束するのだった。
（２００６年／平成１８年１月･歌舞伎座)